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2005年 春号(第10号)…楽しい園芸にも注意が必要です
十国峠から富士を望む(撮影:岡村理栄子)
2005年 春号(第10号)…楽しい園芸にも注意が必要です
楽しい園芸にも注意が必要です
院長 岡村理栄子

ここ数年、季節のめりはりがなく、急に寒くなったり、急にとても暑くなったりとめまぐるしく気候が変わり、体が慣れずに体調不良になりがちです。また、途方もない天変地異が起こるのではないかと心配しています。ただ、やはり今年も桜は美しく、特に小金井公園でのお花見、大勢の方が参加され私も久しぶりにゆっくりし、心和む時間を過ごすことができました。

本当にお花は心が和みます。私の医院の近くでも皆様ガーデニングを盛んに楽しんでおられ、また、される方だけでなく道行く人にも喜ばれています。

ただ、嫌なのは、虫とかぶれ、小さなけがです。虫について小金井の付近で問題なのは、初夏に多い毛虫です。毛虫は刺すのではなく毛虫の毒針に触り、針が刺さりその針の成分にかぶれてできるので他の虫さされと区別され「毛虫皮膚炎」と呼ばれています。そのため、毛虫がいなくても、這った後の木に触ったりしてもできます。刺された、触ったという自覚がないことが多く「なんだろう?」と思ううちに広がっていきます。木を切ったり、枝を片づけたりしているうちに蕁麻疹のように腫れてきたら急いでその部分を石鹸でよく洗うかガムテープを使いバリバリと針を取り去るようにしましょう。このあたりでは椿やサザンカにつく茶毒蛾の被害が多いのですが、最近では桜やバラ、カキの木などにつくイラガの害も多くなりました。この蛾の毒棘にさされるととても痛くすぐに気づきますが、この蛾は繭を作るので、冬それに間違えて触ってしまい皮膚炎を起こす方もいらっしゃるので要注意です。両者の毛虫皮膚炎ともかゆみ止めの塗り薬、飲む薬で早く治しましょう。

又、虫の害だけでなく綺麗な花でもかぶれることがあります。春の花で有名なものは西洋サクラ草です。葉でも茎でも花でもかぶれるために葉をむしったりとお手入れしているうちに手や顔が赤くはれたり痒くなってきます。その上、顔では痕が黒ずんできたりします。早く気づき、早めに治療しなくてはなりません。ご注意ください。

その他、バラの棘やシャポテンの針(幼い子どもさんがいる家庭では育てない方が良いと思います。うっかり踏んでしまい大泣きで来られるかわいそうなお子さんがいます)のささいなけがが化膿したりすることがあります。楽しいことをするのも注意が必要です。長袖、長ズボン、首にはタオルを掛け(襟首から毛虫がはいらぬように)、手袋をしての作業をお勧めします。

皮膚の伝染病が多い夏は注意が必要です! 特に幼い子ども達!

伝染する病気には必ず原因になる病原体があります。その代表的なものはウイルスと細菌です。ウイルスは細菌より小さく、簡単に顕微鏡などで見ることができませんし、薬もあまりありませんでした。その為にワクチンを打ち自分の体に抵抗力を作る方法が採られていました。しかし、最近ではインフルエンザをはじめ、みずぼうそう、ヘルペス等の抗ウイルス剤ができ、有効になってきました。

さて、伝染する病気には全身に病原体が広がり、その症状の一つとして皮膚に症状がひろがるもの(はしか、風疹、みずぼうそうなどでその皮膚に触ってうつるものではない)と、皮膚そのものに病原体がついて症状が出るものがありまか。前者は熱などの全身症状が生じて免疫ができ、二度とかかりませんし、予防注射で防ぐこともできます。後者は皮膚しか症状がなく軽いのですが、免疫ができず何回でもかかります。

特に子どもに、そして夏に多いのが“とびひ”です。とびひは通常は皮膚の表面におとなしく付着しているブドウ球菌が(この菌は食中毒でも有名です)ひっかいてつくった傷、転んだケガ、アセモなどの小さな隙間で急に増え、水ぶくれや赤く皮膚がむけたびらんを作る為、痛がる子供さんもいる病気です。水ぶくれの中には多くの菌がいて水ぶくれが破れると飛び散り、自分の他の場所や他人にもうつります。早めにきちんと抗生物質を塗り、飲むことが大切です。抗生物質は細菌を殺す薬です。細菌を殺すのに必要な血液の中の濃度が大切なので指示どおりにきちんと飲まないと効きません。また、一人一人に付いた菌によって効果がない薬、ある薬がありますので途中で治り具合をみて薬を換えることが必要なこともあります。

普通、人間の皮膚は弱酸性に保たれていて、細菌の増加を阻止していますが、夏に汗をかくとアルカリ性に傾き、皮膚に菌が増えやすくなります。きちんとケアしないとすぐに続けて生じることもあります。子どもは汗を大人よりかきます。汗をかいたらシャワーを浴びさせたり、濡れタオルでこまめに拭いてあげてください。とびひになっても痛がる時以外は、石鹸を使いシャワーで洗うことも大切です。そして、手をしっかり洗うことも教えてください。

さて、先に述べた抗生物質の効かないウイルスにも、皮膚に限られた病気もあります。それらも夏に広がりやすい病気です。代表的なものとしては、みずいぼ(小さなピンセットでとる。あまり痛がる子どもさんは貼る麻酔テープを使います)、ウオノメと間違いやすい、よく手や足の裏にできるいぼ(液体窒素を吹きかけて凍らせる)などです。両者とも有効な薬がなく、少し治療に痛みがありますので、自然治癒を期待するのですが難しく、患者さんの中には自己流の治療で広げてしまう方もいらっしゃいます。また、その間は人にうつりますので、軽いうちに治しましょう。

夏は虫さされ、あせも、かぶれなどと大人もこどもも皮膚のトラブルが多い季節です。特に子どもさんや口の利けない赤ちゃんは当然として、入浴や着替えの時に体の隅々までよくみてあげて、早めに気づいてあげましょう。