2011年 初春号(第25号)…今年もよろしくお願いいたします
今年もよろしくお願いいたします
昨年の猛暑を乗り越えたと思いましたら、今度は西日本での大雪、寒波、東京では乾燥と思わぬ気象異常で体調を崩された方がいらっしゃるのではないでしょうか? スギ花粉も例年の8倍、いや10倍といわれ憂鬱な季節です。それについては本冊子の裏表紙に書きましたのでお読み下さい。
さて、今回私が外来で多くなったと思い、皆様に気を付けていただきたいと思うのは「虫による皮膚炎」です。昨年の猛暑や大きな工場の閉鎖のために、ねずみが繁殖して思わぬ障害が出ています。
虫刺さされの症状は様々です:人の血を吸う、蚊、ノミ、南京虫(トコジラミ)、ブヨなどは刺されると痒く、赤い斑ができ、中央に水ぶくれを作ったり、しこりができたりします。毒針を刺すハチ類では刺された瞬間に痛みが強く大きく赤く腫れます。無数の小さい毒針を持つ毒蛾やその毛虫に触れると、かぶれを起こし小さい赤いぶつぶつが沢山できます。蚊やノミなどに刺されたところは少なくても一週間前後で治りますが、腫れがひどくなり痛さが増したら、ばい菌がついて化膿してしまったか、新たなアレルギーが生じたかもしれません。遅延型アレルギーといいノミやブヨでよく見られます。その場合は是非受診して下さい。
また、ハチ類に何度も刺されると刺されたところだけではなく、全身に蕁麻疹ができ、吐き気や息苦しさに襲われることがあります。それは、ハチ毒に対するアレルギー発作です。刺されるたびに症状がひどくなるので、そのような方は用心のためにお薬を携帯されることをお勧めします。刺された時の応急処置としては刺し口を清潔にし、冷やすことです。ハチの場合、毒を絞り、針を抜くと良いのですが自分の口で吸い出すと、却って口の周りが腫れてひどくなったりします。周りの人に助けてもらい冷静に対応しましょう。また、アンモニアなどは効かず、かぶれてしまうので絶対塗らないで下さい。
最近、小金井市や武蔵野市で多いのはダニによるものです。刺すダニはねずみが落としていくことが多く、
それでも痒ければかゆみ止めを飲みます。
お掃除をしても、刺すダニには効果はありません。アトピー性皮膚炎などの原因になるホコリダニはとても小さいので掃除が効果的ですが、この大きさのダニには効果はなく、殺虫剤の噴霧剤や散布剤が必要です。
耳を澄ませば足音が! 小金井に出没しているのは小さいねずみですので、ねずみ捕りによくかかるそうです。噛まれないように気をつけて処理して下さい。繁華街では大きなねずみがいるそうです。異常気象のためでしょうか。
また、終戦時にはやった南京虫が最近多くなりました。日本ではあまり見られなかったのですが、最近は外国との交流が進み荷物などについてきて繁殖しているようです。皮膚科の学会ではサウナやホテルから荷物についてきてしまった症例などが報告されています。この虫は夜行性で主に露出部(衣服で覆われていない部位)を刺します。手や足先など普通のダニとは違ったところを刺すのですが、虫があまりに多くいると体中どこでも刺すので区別がつきづらくなることもあります。日中は屋内の壁や椅子などの隙間にいて夜人間のところに来て血を吸います。よく見ると卵や虫が見えることがあります。徹底して退治することが大切です。
快適な多摩地区の生活で思わぬことに悩みますが「ねずみも虫も住めないところには人間も住めない!」と考えて、緑多い町に住み続けたいですね。
スギ花粉症と口腔アレルギー症候群
春でいやな事はスギ花粉症です。今年はスギ花粉が沢山飛散するという予報が出されています。
花粉による皮膚炎は、初めは鼻水や涙のためのかぶれが主でしたが、最近では直接花粉が付いた皮膚がアレルギー反応を生じて赤くなったり、かゆくなったりすることがわかりました。また、もともとアトピー性皮膚炎の患者さんは花粉が鼻や目に付く以外にも、皮膚に付いても全体が悪化することが多いこともわかっています。そして、残念なことに昨年は大丈夫だからと言っても今回が大丈夫とは限りません。1人1人のアレルギーの許容量は決まっていると言われ、よくコップに例えられます。つまり、小さいコップの人はスギ花粉を吸い始めて5年程で水が溢れ出てしまい(許容量を超えると)、それ以降毎年アレルギーが起こります。大きいコップの人は何年でも大丈夫なのです。しかし、入れる水が少なければ水が溢れることが少なくなるので、なるべく花粉は吸わないほうが良いと考えます。
多くの杉は私と同じ位の年齢で(終戦直後に植林された)、成熟して花粉を飛ばすようになってから30年以上経ちました。その為に私より上の年齢の方や私達は、ほぼ同時に花粉症を発病し(吸った期間が同じのために)、一時は中年の病気とまで言われていました。しかし、今の子ども達は生まれた時から杉の花粉が飛んでくるので、すぐに許容量を超えてしまい発病する子が多くみられるようになりました。お子さんの鼻がぐじゅぐじゅしたり、顔が赤くなったりしたら、その日の花粉情報を見て下さい。度々重なるようですと疑わしいと考えられます。心配なら血液検査などで確定しましょう。花粉症の子ども達は学校での体育やクラブ活動で悪化することがあり、どう配慮するかが問題となっています。
皮膚科ではもちろん、スギやブタクサなどが起こす皮膚炎やアトピー性皮膚炎の治療にも熱心ですが、花粉症の方は果物によるアレルギーでひどい毒麻疹となる例が多くあり、それも研究されています。スギはキウイ、パイナップル、トマト等でブタクサはスイカ、メロン等のうり科等で、シラカンパはリンゴ、梅等のバラ科、キウイ、セロリ、胡桃等、ヨモギはジャガイモ、トマト等のナス科や香辛料が多く、また口から入れるもので生じ、口の中(口腔)ですぐ発病するので、「口腔アレルギー症候群」と言われています。花粉症の方はご注意を! 治療は他のアレルギー疾患と同じく抗アレルギー剤の内服や外用薬です。抗アレルギー剤は人により口が乾いたり、眠気があり飲めずに我慢する方もいらっしゃいます。最近では脳内には入らず、それにより全く眠気が生じない薬や子ども用の錠剤もできて楽になってきています。それでも一番よいのはなるべく体内や皮膚の表面に花粉を付けないことです。あまりにも花粉の飛散が多い日には外での運動や洗濯物を干さないようにし、眼鏡をかけて下さい(目から鼻に抜けていく花粉が多い! サイズが合ったマスクをして下さい!)。そして、家の中に花粉を持ち込まないように外では帽子を被り(髪の毛に付き易い)その帽子は玄関に置く、花粉症の方も違う方も玄関で花粉を払い落としてコートを脱ぐなどと工夫して下さい。
早く杉が年をとり花粉が飛ばないようになることと、花粉をあまり作らない杉の品種改良が望まれます。最近はただでさえ子ども達が外で遊べるような環境が悪くなり(遊ぶところがない! 事故、事件が多い! 体力が落ちてきて心配です。遊びたいのに遊べないのです)、外で遊べないからゲームをしてしまい、ますます体力や運動能力が落ちてしまいます。植林する時はそんなことは考えずに、防災や未来の子ども達のためにと思ってして下さっただろうに、残念なことです。